※これは架空の話で実在の人物・団体とは一切関係ありません。「因果はめぐる」。人は時々そんなことを口にします。どんなに調子良く立ち回り、イケイケな時間を送っても、そうそういつまで上手く行くとは限りません。ましてや周囲への思いやりや配慮に欠け、底意地悪い所業を繰り返していれば、その報いは、いつか必ず自分に跳ね返ってくるものです。
これからご紹介する田辺久志も、そんなあこぎな自己中男。有名大学の卒業を鼻にかけ、後輩いじめなど日常茶飯事。新卒のカワイコちゃんが入社すれば、その歓迎会の帰り道、言葉巧みに誘い出し、有無を言わせず「手込め」にするなど、その悪行は数知れず。久志の傍若無人な振る舞いに、周囲は顔をしかめるものの、当の本人は全く気にも留めません。歯科医の妻に購入させた愛車ボルボに颯爽と乗り込むと、いつものように我が物顔でのし歩いておりました。
ところが、そんな非道な男に限って上手く立ち回るのが得意で、あれよあれよという間に部長職まで昇り詰めます。その一方、久志もある悩みを抱えていました。それは情けないほどの「早漏男」だったということです。それにも関わらず、女とみると見境ない彼は、派遣のバツイチ職員加代にまたぞろ手を伸ばし、うっかり妊娠させてしまいます。
ところが、この事件が久志にとってはまさしく運命の分かれ道になってしまいます。派遣職員を一人や二人妊娠させたことなど、彼にとっては単なる火遊び程度に過ぎません。ところが、この出来事の後で、彼はそれまで築き上げてきた地位も名誉も家族も愛車も、何もかもいっぺんに失うことになりました。いくら因果応報とは言え、部長まで昇りつめながら、久志は自らの悪行によって全てを失い、その日の内に路頭に迷います。あまりに惨めな早漏男の顛末をご覧下さい。