あらかじめ薬を飲んでおいて、性病の感染を防げる予防薬があったら、性病を気にせず性交渉を楽しめる、そんなふうに考える男性は、けっして少なくないでしょう。
結論から申し上げますと、性病の予防薬は、存在します。
思わずガッツポーズをしたくなる人もいるかもしれませんが、性病の予防薬はけっして万能ではないことを理解して、正しく使用しなければ、よけいに身体にとって害悪となりかねません。
この記事では、性病の予防薬にはどのようなものがあるのか、そしてその特徴と、使用する際の注意点などをご紹介します。
性病の予防薬に対する正しい知識を身に付けて、安全安心な性交渉を楽しんでください。
性病の予防薬には2種類が存在する
まずは性病の予防薬には、どのようなものがあるのかをご紹介します。
簡単に紹介してしまえば、現在性病の予防薬として処方されている薬は「ドキシペップ(Doxy PEP)」、そして「プレップ(PrEP)」「ペップ(PEP)」が存在しています。
「予防薬」と聞くと、それを飲むだけでどの性病にも感染しなくなる、そんな万能薬を期待するかもしれませんが、残念ながらそんな便利な薬は存在しません。
そこのところを勘違いしてしまうと、せっかく性病の予防薬を手に入れても、無意味になってしまう可能性があります。
まずはそれぞれの性病の予防薬がどのような特徴を持っているのか、しっかり理解しておいてください。
ドキシペップ(Doxy PEP)は梅毒・淋病・クラミジアの予防薬
まずご紹介するのは「ドキシペップ(Doxy PEP)」です。
ドキシペップは、性交渉後72時間以内に服用することで、性病のうち「梅毒」「淋病」「クラミジア」の3種類を予防できる、抗生物質です。
予防確率は、梅毒とクラミジアが90%程度、淋病は60%程度、とされています。
服用する時間は性交渉後72時間以内ですが、できれば性病の原因となる細菌やウイルスが繁殖する、24時間以内の服用が理想、とも言われている点には、注意しましょう。
逆に性交渉後72時間以上が経過している場合は、ドキシペップを服用しても性病の発症を予防できる可能性は低くなります。
梅毒は、近年日本でも急激に患者数が増えており、問題視されている性病です。
しかも潜伏期間が長く、悪化すると命まで奪う病気のため、多くの人に恐れられています。
また淋病とクラミジアは、性病のなかでも非常にメジャーな存在であり、感染した人によってはほとんど症状が出ないため、多数の人が感染させる、させられる危険を秘めた病気です。
これらの3種類の性病を予防できる、という意味で、ドキシペップは非常に有効と言えるでしょう。
プレップ(PrEP)とペップ(PEP)はHIV感染の予防薬
性病のなかでも、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)への感染予防に特化しているのが、プレップ(PrEP)とペップ(PEP)です。
正確にはプレップ、ペップは「薬の名前」ではなく「HIV感染を予防するための手段」の名前です。
プレップは「暴露前予防内服(Pre-exposure Prophylaxis)」のこと、ペップは「暴露後予防(Post-exposure prohylaxis)」のことを指します
予防する性病は同じですが、プレップとペップでは、薬を服用するタイミングが異なります。
プレップは、毎日継続して予防薬を服用することで、あらかじめ性交渉によるHIV感染を予防する方法、ペップは性交渉後に服用して、HIV感染を予防する点が異なる、と覚えておくと良いでしょう。
プレップとペップでは、服用する薬が異なりますので、その点はしっかり医師の説明を聞き、理解しておく必要があります。
薬を服用する際は、プレップは毎日継続して薬を服用し続けなければならない点、ペップは性交渉後72時間以内に服用をスタートしなければならない点がポイントです。
またペップの場合は、1回服用すれば良いわけではなく、服用を始めてから28日間続けて薬を飲み続ける必要があることも注意しなければなりません。
途中で薬の服用を止めてしまうと、体内で生き残ったHIVが再び増殖を始め、感染してしまう可能性が出てきます。
プレップ、ペップは予防効果がかなり高く、感染確率を99%下げることが期待できますが、どちらも「正しく服用を続ければ」との注意文が付くため、当然正しく服用しなければ感染の危険が高まる点には注意しましょう。
性病予防薬「ドキシペップ」を服用するときの注意点とは
どのような薬も、最大限に効果を発揮させるためには、正しく服用する必要があります。
当然、ドキシペップも正しい服用をしなければ、性病を予防する効果はありません。
ドキシペップを服用する際の注意点をご紹介しますので、しっかり頭に入れておきましょう。
ドキシペップを一度服用してから再度服用する場合は2日間空ける
ドキシペップは、性交渉後72時間以内、可能であれば24時間以内の服用が推奨されています。
1回の性交渉に対して1回の服用で効果があるため、ドキシペップを服用したあとに性交渉をした場合、再びドキシペップの服用が必要になります。
しかしドキシペップは、1回服用したら再度の服用までには2日間(30時間)空けなければなりません。
そのため、連日何度も性交渉をする職業の場合など、頻繁にドキシペップを服用する必要がある人は、医師に服用について相談する必要があるでしょう。
ドキシペップを服用しても性病の感染を完全に防げない
ドキシペップはそもそも前提として、梅毒・淋病・クラミジアの3種類の性病感染を予防するための薬です。
そのため、この3種類の性病以外はドキシペップの服用では予防できません。
また、ドキシペップを服用すれば、対象となる3種類の性病も100%予防できるわけではない点にも、注意が必要です。
ドキシペップによる性病の予防確率は、梅毒とクラミジアが90%程度、淋病は60%程度となります。
梅毒とクラミジアはともかく、淋病はそこまで予防に関して頼りになる数字とは言えませんね。
そのため、ドキシペップだけに頼るのではなく、ほかの性病予防手段も併用することが大切になってくる、と言えます。
ドキシペップを服用しても性病の原因菌が死滅するわけではない
ドキシペップはあくまでも、服用することで体内の原因菌の増殖を抑えて、梅毒やクラミジア、淋病の発症を予防する薬です。
体内の原因菌が死滅するわけではないため、すでに性病の症状が発症している場合は治療の効果はありません。
また体内に原因菌が残っているため、性交渉をおこなうと相手に性病を感染させる可能性があります。
そのためドキシペップの服用中に性病の疑いがある症状が出た場合は、すぐに専門医の診察を受け、治療するべきです。
ドキシペップの服用によって副作用が起こる可能性がある
どんな薬のも言えることではありますが、ドキシペップを服用することで、身体にさまざまな副作用が起こる可能性がある点には注意が必要です。
ドキシペップの具体的な副作用として知られているものには、次のようなものがあります。
- 下痢
- 吐き気
- めまい
- 光線過敏症
- 胃腸疾患(食道びらんや腫瘍など)
これらの症状は、服用を初めてから間もない時期に起こりやすく、服用を続けて薬に身体が慣れてくると少しずつ起こりにくくなってくるのが特徴です。
薬の服用を止めれば症状が起こらないため、どうしても副作用がツラい場合は、医師に相談してみると良いでしょう。
ドキシペップの個人輸入は避ける
ドキシペップを受け取るには、病院で医師の診察を受け、処方箋が必要となります。
いわゆる「処方薬」と言われるタイプの薬で、処方箋がなければ町の薬局やドラッグストアでの購入はできません。
しかし「わざわざ処方箋をもらいに行きたくない」と考える人も多く、そういった人たちが手を出しがちなのが「薬の個人輸入」です。
とくに現在では、インターネットによって薬の個人輸入が比較的簡単になり、つい利用してしまう人も少なくありません。
ただし、薬の個人輸入には大きなリスクもあります。
大して成分が含まれていない粗悪品や、使用期限が切れた薬、さらには何の効果もないニセ薬などが含まれている可能性があり、さらにそれらを服用することで健康被害が生じる可能性もあるのです。
個人輸入した薬を使用して健康被害が出た場合、日本の「医薬品副作用被害救済制度」の対象外になってしまうため、なんの保証も受けられません。
またほかの薬を服用していたり、持病があったりすると、ドキシペップの服用ができないケースもあります。
そういったリスクを避けるため、ドキシペップを服用したい場合はしっかり専門医に相談し、処方箋をもらうようにしてください。
性病予防薬プレップ・ペップを服用するときの注意点とは
続いて、HIVの予防薬であるプレップ、ペップを服用するときの注意点をご紹介します。
安全で健康的な性生活を送るため、しっかりと薬を服用する際の注意点は把握するようにしましょう。
服用開始前にHIVに感染していないかの検査を受ける
プレップの服用を開始する前に、HIVに感染していないかの検査を受けなければなりません。
これは、すでにHIVに感染している人がプレップやペップの服用を始めてしまうと、HIVに薬剤耐性ができてしまって一部の抗HIV薬が効かなくなってしまい、治療に支障がでる恐れがあるためです。
またプレップやペップを飲み始めてからも、定期的にHIV検査を受ける必要があります。
プレップやペップの感染予防効果は非常に高いですが、100%、絶対とは言い切れません。
定期的な検査が必要なのは、万が一HIVに感染してしまった場合に、プレップ、ペップの服用を中断する判断をするためです。
ただ単純に服用すれば良い、というわけではない点を理解しておきましょう。
プレップやペップはHIV以外の感染は防げない
プレップやペップは、HIVの感染予防に特化した薬のため、HIV以外の性病に関しては効果がありません。
HIVの感染を防げても、ほかの性病に感染してしまっては、意味がないと言えます。
性交渉をおこなう際は、プレップやペップのほかに、性病の予防ができる手段を併用しなければならない、と考えておいてください。
プレップやペップを服用すると副作用が起こる可能性がある
とくにプレップによるHIVの感染予防をおこなう場合、ずっと薬を服用し続けなければならないため、健康への影響や副作用が気になる人も多くいます。
とは言え、プレップの安全性は世界的に認められるレベルで高く、ほとんどの人は副作用などを感じずに服用を続けられる、との結果が出ているため、まず安心して良いでしょう。
ただし副作用には個人差があるため、人によっては吐き気や腹痛、頭痛、下痢などの症状が出る可能性はあります。
とは言え、こういった副作用は軽めで、もし症状が出たとしても服用を始めてから数週間程度で収まる場合がほとんどです。
ペップの場合も、吐き気や頭痛、発疹、不眠や軽いめまいなどの副作用が報告されていますが、これらの副作用も軽めのため、とくに大きな問題とはならないでしょう。
これらは短期的な副作用ですが、長期的な副作用としてはプレップ、ペップともに腎臓に障害が出る可能性があります。
そのためプレップ、ペップともに服用を始める前には、腎臓の検査を受けることも推奨されている点も知っておきましょう。
さらにB型慢性肝炎ウイルスに感染している場合、プレップ、ペップの影響で悪化する恐れがあるため、こちらも事前に検査を受ける必要があります。
プレップやペップの個人輸入は避ける
プレップやペップは、医師の診察が必要な処方薬です。
そのため診察を受けるのが恥ずかしい、診察を受けるのが面倒、などの理由で、個人輸入でプレップやペップを入手しようとする人もいます。
しかし個人輸入の場合は先にもご紹介したように、粗悪な薬や偽の薬による健康被害を受ける可能性もあるため、個人輸入は止めておくべきです。
またプレップ、パップを始める前には、腎臓やB形肝炎ウイルスの検査を受ける必要があります。
そのため面倒でも、しっかり医師の診察を受けて、正式な処方薬を服用するようにしたほうが、長期的な観点から考えると不安なくHIV対策が可能です。
一部の性病にはワクチンの予防接種が有効となる
服用するタイプの性病予防薬ではありませんが、一部の性病にはワクチンの予防接種が有効となります。
性病に対する予防方法のひとつとして、知識として身に付けておき、自分で納得できたら予防接種を受けておくのも良い判断、と言えるでしょう。
淋病予防ワクチン
淋病予防ワクチンは、もともと存在している「髄膜炎菌B型ワクチン」を流用することでおこなわれています。
淋菌と髄膜炎菌B型の構造が似ているため、同等の効果があることが以前から予想されており、2004年頃からフランスの研究チームの調査によって「髄膜炎菌B型ワクチンで淋病の感染を51%予防できる」と報告がありました。
ワクチンだけではそこまで感染予防確率は高いとは言えませんが、性病予防薬であるドキシペップと併用することで、より高い予防効果が得られる、と考えられています。
ただしまだ研究は途中であり、淋病予防ワクチンを接種した際にどの程度の期間効果があるのかは、はっきりとはしていませんので、その点は今後の情報を待ちましょう。
HPV(ヒトパピローマウイルス)予防ワクチン
HPV(ヒトパピローマウイルス)予防ワクチンは、女性が接種することで「子宮頸がん」の予防に効果がある、と言われています。
そのため女性が接種することがほとんどでしたが、現在ではHPVは性病の「尖圭コンジローマ」のほか「中咽頭がん」「肛門がん」の原因と考えられているため、男性の接種もおこなわれるようになりました。
また男性がHPV予防ワクチンを接種することで、女性へのHPV感染を予防し、結果的に子宮頸がんの発症を防ぐ、とも言われています。
自分だけでなく、パートナーの身体を守るためにも、HPV予防ワクチンを接種するのはひとつの方法、と言えるでしょう。
A型肝炎・B型肝炎予防ワクチン
一般的には性病として含まれない「A型肝炎」「B型肝炎」ですが、これらも性交渉によって感染する病気、と言う意味では予防ワクチンを接種しておく意味があります。
とくにB型肝炎は、重篤な肝臓疾患に進行してしまう可能性がある病気であるため、ワクチンで予防しておくのはけっして悪いことではないでしょう。
A型肝炎、B型肝炎それぞれのワクチンと、A型肝炎とB型肝炎混合のワクチンがあるため、自分にとって必要と思われるワクチンを接種しましょう。
A型・B型肝炎混合ワクチンは、1回目に接種してから4週間後、6か月後の合計3回接種が必要ですが、10年から15年程度効果が続くため、接種しておけば安心です。
性病の予防薬やワクチンだけでは完全に性病感染は防げない
性病の予防薬やワクチンにはさまざまなものがありますが、それだけでは完全に性病は防げません。
そのため安心して性交渉をおこなうには、性病の予防薬の服用やワクチンの接種だけでなく、そのほかの予防法も併用する必要があります。
どのような予防法を併用するべきか、ご紹介しますので参考にしてください。
コンドームを着用する
性病感染の予防法として、コンドームは非常に有効です。
粘膜同士の接触によって性病は感染しますので、コンドームで性器をガードするのは、性器への性病感染をほぼ確実にガードしてくれます。
もちろんコンドームによる性病予防も100%ではありませんが、性病予防薬やワクチンと併用することで予防効果はかなり高くなるでしょう。
ただし性病予防のためのコンドームは、挿入時だけでなく性交渉の始まりから着用しておく必要がある点には注意が必要です。
性交渉の前に手洗いやうがいや入浴をして身体を清潔にしておく
性病の原因となる細菌やウイルスは、想像以上に口の中や性器の表面などにも存在しています。
そのため性交渉の前に、手洗いやうがい、そして入浴で身体を清潔にしておけば、ある程度は性病予防になります。
ただし細菌やウイルスは、体液の中にも存在しているため、清潔にしておくことは気休め程度にしか過ぎない、との意見も。
とりあえず、性交渉前のマナーとして身体を清潔にしておくのは大切、と言えるでしょう。
まとめ
性病の予防薬としては、梅毒・淋病・クラミジアを予防するドキシペップ、HIVを予防するプレップとペップが存在しています。
また服用するタイプの性病予防薬以外に、淋病、HPV、A型・B型肝炎のウイルスなども、性病感染を予防する手段です。
これらを併用して性病感染の予防確率もアップさせることもできますが、予防薬とワクチンだけですべての性病感染を防げるわけではありません。
コンドームなど、その他の性病予防法も併用することで性病の予防確率を大幅に下げられるため、くれぐれも「予防薬を飲んだから大丈夫」などと過信しないようにしましょう。
また大切なのは、しっかりと専門医師の診察を受けてから、性病の予防薬を処方してもらうことです。
人によっては、性病の予防薬を服用することで体調を悪化させたり、性病に感染したときの治療に支障が出たりする場合もあります。
そういった危険を防ぐため、しっかりと「アモーレクリニック」のような性病に詳しいクリニックで診察を受けてから、性病予防薬を使用するようにしてください。